DATE 2011.12.30 NO .







 ――あたし? あたしはミストに戻るよ。
 お母さんもいないし、知っている人もあの日にほとんど死んじゃったけど……それでも、純血の召喚士の生き残りとして、あたしはミストに帰らないと。世界中に散らばっていた召喚士の血筋の人達が少しずつ帰ってきてくれている、あたしにも復興を手伝ってほしい、って。村長さまがそう言ってくださってるの。あたしを必要としてくれる人がいる、それが嬉しいの。

 ローザはきっとすごく忙しいんだろうけれど、いつかミストに遊びに来てね。セシルも、来てくれるといいな。あたしもまたバロンに来るね。

 エブラーナ?
 エブラーナは……ちょっと遠いね。







 ――俺? 俺は国に帰るに決まってるだろ。
 やる事は山程ある。城から魔物共を追い出して、焼けた区域を何とかして、でもって掃除だな。人数が減っちまった分、役回りの編制もやり直さねーと。……ま、とりあえず城にさえ帰れりゃ、あとはどうにでもなるだろうから心配すんなって。すぐに俺の戴冠式に呼んでやっからよ。

 セシル、お前も大変だろうけどな、くれぐれも一人で背負い込むんじゃねーぞ――って、何がエッジにだけは言われたくない、だ!

 ……あー、年上をからかうなよ……ったく……。
 〜〜っ、そうだよ、お前の言うとおりだよわかりやすくて悪かったな!!

 でもな、これでいいんだ。
 俺がお前を幸せにしてやる、じゃ駄目なんだよ、あいつは。引き換えになるもの、捨てなきゃならねぇモンから目を逸らす事ができねーんだよ。

 よりたくさんの人間が幸せになれる。ならそれが一番――だろ?







「――優しい、のかしら」

「エッジの考え方、僕はわかる気がする」

「リディアは、自分の気持ちを表現する言葉を知らないだけよ」

「けれど僕達が教える事じゃない。もしかしたら答えは違うかもしれないからね」

「その、『たくさんの人間』が幸せになった後――復興を終えたら、二人はちゃんと自分の幸せに目を向けるのかしら」

「復興以外にも二人の抱える問題はいろいろあると思うけれど、リディアの気持ちや二人の選択の先の結果がどうであれ、『たくさんの人間』の中に自分達を含めてくれさえすればと――願っているよ」







≪あとがき≫
 彼らが夢みる未来は、まだ、先の話。
 
 
 





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